ドライアイ・涙のあぶら Dryeye

今までドライアイと診断されていて、いくら点眼しても改善しなかった、もしくは、点眼した瞬間だけ改善したが、すぐに効果がなくなってしまった、などで悩んできた患者さんは、もしかしたら「あぶら不足のドライアイ」かもしれません。
涙の成分はおおよそ99%の水分と1%のあぶら分からなっています。
水分が足りないタイプのドライアイは点眼治療で改善が見込めますが、あぶら分が足りないタイプのドライアイはあぶら分を補う治療をしなければ、いくら点眼してもどんどん水分が蒸発してしまうので、改善が見込めないのです。

涙の構造

あぶら不足のドライアイはほとんどの場合、マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction, MGD)が原因です。
MGDという疾患名は1980年に初めて提唱されたもので、比較的新しい用語です。マイボーム腺は瞼のなかにあって、涙の油分を分泌していることから「まぶた」「なみだ」の両方の性質をもっています。
つまり、MGDは眼瞼炎の一因(まぶたの炎症)でもあり、ドライアイの主因(水分が蒸発してしまうタイプのドライアイ)でもあります。2008年Aritaら(私のことです)が赤外光を用いて非侵襲的にマイボーム腺の形を観察する検査法(マイボグラフィー)を開発したことにより、国際的にMGDを診断し、治療することが急速に可能となりました。新しい時代の幕開けです。

非侵襲的マイボグラフィー

マイボーム腺関連疾患

ものもらい(麦粒腫、霰粒腫)
マイボーム腺の感染や脂のつまりによるしこり。時に炎症を伴う
脂が足りないタイプのドライアイ
マイボーム腺から分泌される涙の脂分が不足することにより、涙の量が正常であっても乾燥感、異物感、流涙感がおきる。

今まで原因不明の眼不定愁訴として、また特別な治療法のない疾患として多くの眼科医に見過ごされがちな疾患であったMGDですが、高齢者においては7割以上がMGDで苦しんでいます。失明しない疾患ですが、Quality of Life, Quality of Visionの低下を引き起こし、眼科手術後のドライアイの一因としても国内外で問題になっています。診断機器も進歩し、治療法もさまざまなオプションが出現してきており、重症度により組み合わせ、選択できる時代がやってきています。

みなさまへのメッセージ

診断機器も進歩し、治療法もさまざまなオプションが出現してきており、重症度により組み合わせ、選択できる時代がやってきています。ドライアイ症状で苦しまれているかた、ドライアイかどうかわからないけど、目が開けられない、目が痛い、目が重い、目が疲れるなど点眼薬だけで改善がみられないかたは、ぜひ一度、あなたの涙の成分(水と脂の質と量)を詳しく調べてみましょう。

診療予約